電動バイクを自作しよう!!!~ズーマーのEV化~
ズーマーをEV化したのでそのレポートです。
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目次
1.はじめに
世界各国で「脱ガソリン車」が叫ばれる昨今。日本でも35年までに新車販売の脱ガソリン化を提言しています。
脱ガソリン車?政府が「2035年ガソリン車新車販売の禁止」を打ち出した理由とは | Loops Style ブログ | Loops Style
あのトヨタも世界の流れには乗るほかなく、将来的にEVの時代になるのは致し方ないという時代です。
もはや立ち入る隙はない? EV含め全方位開発に邁進するトヨタが牙を剥いた相手は誰か!? - 自動車情報誌「ベストカー」
となると、いつまでも2stエンジンのポート加工ばかりをしている訳にもいきません。ガソリンにはガソリンの魅力がありますが、それはEVを学ばなくては良いという理由にはなりません。来たるその日にEVの知識がなければメンテナンスすらままならないのです。
ということで、EVとはどのようなものなのか、理解を深め技術的好奇心を満たすため電動バイクの製作をしようと思います。
2.用意したもの
・ハブモーター(インホイールモーター)
・バッテリー(今回は軽自動車用鉛バッテリー)
・モーターコントローラ
・KLX250用スイングアーム
・配線等電気部材
前書きで随分イキりましたが、EV化は想像以上に楽です。部品さえ手に入ればエンジン車よりはるかに楽に組み上げることができます。部品の汎用性も高いので応用もしやすいはず。
3.モーターについて
モーターはインホイールモーターを使用しました。
これはホイールそのものがモーターになっているもので、部品点数や回転抵抗のロスを少なくすることができます。ただ、ホイール自体が10キロ近くあるのでバネ下重量が重くなるというデメリットもあります。
使用したモーターはこちら
evkoumei.shop-pro.jpこれの800Wのものを購入しました。600Wだと原付一種扱いとなり不便ですが、1000W以下である800Wなら原付二種扱いとなり面倒な二段階右折や30キロ制限がなくなります。
もう少し安くモーターを買いたいという方はこちらもあります。
kellycontroller.comケリーから販売されているインホイールモーターです。おそらくKOUMEIから販売されているものと同じモーターですが、写真から見るに違いとしては
1.ケリーモーターの方が高出力(1000w~)
2.KOUMEIモーターの方にはブレーキが付く(ドラムorディスク)
そのほかKOUMEIにはロゴが付く、緑色のめっきが付くという変更点があります。
おそらくブレーキを付ける加工のため値段が高額になっているのでしょう。ですが正直なところブレーキは付けなくてもモーター自体がブレーキとして使用できるためあまり必要ない部品とも言えます。バッテリーが切れたときにも使えるブレーキ、という意味では有用かもしれません。
4.バッテリーについて
バッテリーは費用削減のため軽自動車用鉛バッテリーを使用しました。
www.monotaro.com鉛バッテリーは充電回数や高電流には弱いので正直EVには不向きだと思います。本当はちゃんとしたリチウムイオンバッテリーが欲しい所ですが、かなり高額になってしまうため鉛バッテリーで我慢しました。
・バッテリーの充電
48v用のバッテリー充電器は売られているものの、ちゃんとしたものは5万近くして高額、安物も売られているもののACアダプタみたいな感じでちゃんと充電してくれなそうで怖い。そこで24v用の充電器を二つ購入。Amazonの安物ですが一応使えています。
バッテリー 充電器 メンテナンス充電器 バッテリーチャージャー 8A大電流 12/24V 兼用 電動自転車 過電流保護 自動車 バイク用 全車種適用
真ん中の配線を外して24v*2として充電しています。
5.モーターコントローラ―について
ケリーのモーターコントローラーが一番安心できると思います。
kellycontroller.comモーターやコントローラーはAmazonなどで中華製の安い物も出回っていますが、どちらを採用するかはお財布との相談と信頼性です。
自分はKLS4812Sというコントローラーを使用しました。ケリーのHPを見ると既に廃盤の品みたいですが、上記リンクのものと大差はないと思います。
ケリーのモーターコントローラはRS232ケーブルやBluetooth経由でモーターの細かいセッティングができるのでかなり便利です。エラーが出た時もちゃんと報告してくれるので安心して使うことができます。
・コントローラーのセッティングについて
ケリーのモーターコントローラはスロットル開度、出力、ブーストや回生機能など様々な項目を自分でセッティングできるという便利機能がついています。
セッティングにはコントローラーの他に専用ケーブル(RS232)若しくはBluetoothアダプタが必要です。
・RS232
自分はBluetoothでのセッティングは試していません。のでここからはRS232で接続した時の話になります。
手持ちのPCにRS232用の端子がない場合はUSB変換ケーブルを使用します。
ソフトはここからDLします。
手持ちの機種に合わせてマニュアルとソフトをDLします。自分の場合はKLSでした。
これは自分の環境だけかもしれませんが、win10で起動するとどうしてもモーターを読み込んでくれませんでした。XP版のソフトで互換モードを使用しSP3で起動すると問題なく起動します。それでもダメな時はコントローラーの再起動です。
Bluetoothでの接続は試していないので未確認です。
スマホからセッティングできるのでかなり便利なはずです。自分は費用をケチって買いませんでしたが…。
セッティング画面
上の画像のような項目をセッティングできます。
面倒なので解説は省略。ケリーのHPにマニュアルがちゃんとあるのでそれを読みましょう。英語版しかありませんが、グーグルドキュメントに放り込めばそれなりに翻訳してくれます。(原文と照らし合わせて読む必要はありますが)
6.灯火系
電源の48vを降圧する方法もありますが、中華のレギュレータは安いけど信頼性がイマイチ。質の良さそうなものは高額なので48vでそのままLEDを動かすことにしました。できる限り省エネを目指します。
ウインカー
こんな感じで純正ウインカの中にLEDを仕込みます。
48v駆動にする関係上市販のウインカーリレーは使用できません。点滅回路を自分で組むこともできるようですが、ちょっと面倒…そこで点滅機能付きのLEDを用意しました。
akizukidenshi.com繋ぐだけで点滅してくれるのですぐにウインカが作れます。自分はLED2本を直列で繋いだのですが、点滅の周波数がLEDごとに微妙に異なるらしく、点滅にばらつきが出ます。シーケンシャルウインカーだと思うことにします。
LEDの抵抗選定はこちらのサイトが役に立ちます。
電源電圧が50V(満充電時)と高いためワット数の大きめの抵抗を使わないといけません。自分は3Wのセメント抵抗を使いました。
ヘッドライトとテールランプ
ヘッドライトはパワーLEDではなく普通の砲弾型LEDを使用しました。パワーLEDはめちゃくちゃ明るいですが発熱の処理が面倒です。
これは砲弾型ですが10.8v45mAまで流せます。1本だけでもそれなりの明るさがあるので十分。しかもズーマーは2灯なのでこれを2つ付けられます。
テールランプも上のLEDと同じものを1本使用。純正のテールランプに組み込みました。
ブレーキランプ
これはブレーキと連動させる必要があるので12vで動かしています。
後述のブレーキの項目で詳しく書きます。
7.ブレーキ
前輪はそのままドラムブレーキ、後輪はモーターブレーキ(回生)を使います。
本当は後輪にもドラムブレーキが付いていたのですがスイングアームに干渉するため使用していません。
コントローラの12v出力とコントローラのブレーキスイッチを短絡させることで回生ブレーキが効きます。ズーマー純正のブレーキスイッチを繋げて前輪と後輪のブレーキを同時に効かせるように作りました。ここの12vに直列してLEDをつなぐことでブレーキランプも使えます。(ただしマニュアルにはCapacity is Lowと書かれておりLEDを1個繋ぐに留めました。2,3個のLEDは付けられるでしょうが電球はやめておいた方がいいでしょう。)
ほか加工したもの
・スイングアーム
エンジンを取り外した場所にスイングアームを取り付けます。
スイングアームはKLX250用の物。ホイールについているシャフトは固定されていて外すことができないので、シャフトの取付部がC字になっているものを選びました。
ブレーキ側に付属のプレート(回り止め)を2枚挟んでいます。
スペースの都合上ドラムブレーキは外してあります。
反対側、かなりギリギリの状態でついています。
正直このスイングアームを選んだのは成功とは言えません。
取り付ける際、スイングアームの内側が中空になるのでカラーなどで間を埋めてあげた方がいいと思います。(スイングアームの横揺れ防止)カラーを自作するのは面倒なため手持ちのナットを連結させてカラーとして代用しました。スイングアームの持ち手部分はセットカラーを重ねて取り付けています(自分の使用したKLXスイングアーム外径20㎜)。
スイングアームの中空になる部分には適当なM12ナットを入れています。本当はちゃんとしたスペーサーを使うべきです。
こうして無事スイングアームは取り付け完了。
そしてリアサスを取り付ける訳ですが、サスはアップガレージに転がっていたAPtrike125用のスイングアームを使用しました。
サス上部がフレームに干渉するためアダプターで高さを稼いでいます。
ちなみに使用したサスはアップガレージに転がっていたAPtrike125用のリアサス。トライク用という事でそれなりにしっかりしたサスです。
車高を考えると330㎜以上のサスが欲しいといった印象です。
下の取り付け部はスイングアームに元々あったM8の穴を使用しています。
取付方法が少し心もとないですが…今のところ大丈夫です。心配な方はスイングアームにドリルで穴を空けてそこに取り付けるのがベストだと思います。
また、エンジンが無くなったためメインスタンドが無くなります。
そのためズーマー用サイドスタンドを購入し、いい感じに止まってくれます。
ホンダ 用 サイド スタンド ズーマー AF58 黒 ブラック スクーター 汎用品 バイク カスタム パーツ
・配線など
モーターの電源線などはそれなりに高い電流が流れるのでそれなりに太いものを選びましょう。
個人的にはこれが長さ、太さ的に丁度良い感じがします。ヒューズもついてきてお得!
エーモン(amon) 大容量電源取出しコード AV5.00sq 6m 赤 1188
800wのモーターに流れる電流はこれが目安になりました。
https://www.kellycontrollers.eu/hub-motor-48v-800w
パフォーマンスの表を見る限り最大でも32Aらしいので灯火類などを見積もって大目に50Aくらいのヒューズがあればいけると思います。
これは簡単です。自分の管轄の市役所では「原付を電動にしたんですけど~」と言えば変更理由の書類とともに登録変更の書類をもらえました。そこに「800wインホイールモーターを取り付けたため」と記載し完了。
自分も知らなかったのですが、600w以下は白ナンバー、600~800wは黄色ナンバー、800~1000wまでがピンクナンバーになるみたいです。
自分は800wのモーターだったので黄色ナンバーです。ピンクより税金が少し安い!
9.実際に走行した感想
で!!実際に走行したわけですが……
40キロしか出ない!!!!せっかくの黄色ナンバーなんだからもう少しスピードが欲しい……これなら白ナンバーのままの方がまだマシ。何かセッティングや組付けの不具合があるのか?そもそも800wのインホイールモーターはこれが限界のなのか??イマイチ不明な部分は多いです。ですがトルクはあります。0-30の加速に関しては100㏄に乗ってるくらいの感じはあります。坂なんかもぐいぐい登っていく。
航続距離は試していませんが鉛バッテリー48v28ah(5hr)で2~30キロ程度でしょう。
近所のお買い物程度が限界かと思います。
10.参考になるサイト等
・Kelly Controls - Motor Controllers, EV Parts
・秋月電子通商 トップページ - 電子部品・半導体 【通販・販売】
・工具通販 MonotaRO(モノタロウ) 現場を支えるネットストア
おわりに
今回のEV化は問題点として航続距離、充電場所の問題は避けられませんでしたが、近い将来ガソリンのようにどこでも給電できるインフラが整うと思います。
response.jpこれが普及すれば今回のEVズーマーも軽量化、航続距離アップを見込める訳です。
バッテリーが高容量化できれば高出力のモーターを原付に取り付けて計二輪化し、原付の車体で高速道路を走ることも容易になります。EV化は思いのほか楽に部品を組むことができるので(エンジンスワップと比較して)バイクいじりの新たな可能性として期待できます。これからのバイクがどうなっていくのか、とても楽しみですね。
ありがとうございました。
追記:リチウムイオンバッテリー導入しました
自作電動バイク 禁断の中華リチウムイオンバッテリー導入! - おぼえがき